|
現在26歳になる長女がまだ高校生の頃です。
産土神社の秋祭りの日、友達と連れだって祭り見物に出かけて行った娘は、露店で花火を沢山買って帰ってきました。夜になって買ってきた花火を持って出かける娘に、「あまり遅くならないうちに帰るんだよ」と声をかけました。 娘は「わかった、遅くならないうちに帰る」と言って友達と楽しそうに出かけて行きました。
我が家の門限は、午後9時と決めてあったので、それまでには帰ってくるものと私は思っていました。 しかし、その日の娘は午後9時を回っても帰って来ません。10時を過ぎても帰りません。私は門限を守れない娘に苛立ちを覚えながら待っていました。
時計の針は10時30分を回っていました。今日は、堪忍出来ぬ。
「バカモン! 今何時だと思っているんだ」「遅くなるなら、そうなると電話をかけられないのか」「約束事を守らんとは何ということだ。そんな娘に育てた覚えはないぞ!」
私は、なんと言って反省させようかと“叱り文句”を考えていました。それまでには彼女に対して声を荒げて叱ったことも、何度かありました。売り言葉に買い言葉で、次第に親子の言い争いがエスカレートして、関係を修復するのに日にちがかかったこともありました。ですから、心に浮かぶどの言葉も娘が素直に“ハイ解りました”と反省を促す言葉に思えませんでした。
私はいらいらしながら、もっとも効果的に彼女の心に響く説教文句を探し求めたのですが、なかなか見つかりませんでした。
しばらくして、少し冷静になって自分の苛立ちの原因がなんであるかを考えてみました。すると、娘を自分の所有であるかのように思い、自分の意に添わない思いに苛立ちを覚えているのだということがわかってきました。娘はたぶん、あまりの楽しさの中で時間の過ぎるのを忘れて夢中で遊んでいるだけなのだ。約束事を破るとか、親の心を裏切るとか、大それた考えなどないのだ、というように考えられるようになりました。
すると、帰ってくるであろう娘へに対する言葉もどのようなものにしたらよいか見えてきました。とにかく、心の底から彼女のすべてを受け入れ、娘の帰宅を待つことにしました。
まもなく娘は帰宅し、小声で「ただいま」と言って私のいる居間に入ってきました。
以前の私なら、開口一番「バカモン!」でしたが、今回は「お帰りなさい」といって、娘を心で包み込むような思いで「楽しかったかい」といって声をかけてやりました。
たぶん叱られると思っていた娘は一瞬意外そうな顔をしましたが、「お父さんとても楽しかったよ」「私の線香花火は誰のより長く輝いて光っていたんだよ」「噴水のように飛び出すドラゴン花火にはみんなビックリ...」といって、事細かく、友達との会話や花火遊びの情景を話してくれました。
そして、こちらが何も咎めなかったのに、最後にこういってくれたのです。「お父さん、遅くなってごめんなさい」
その後、娘は再び門限を破ることはなく、また、約束事を破る事もありませんでした。 (平成16年6月30日記)
|