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現在8歳になる息子が生まれる時の話です。
妻のお腹が目立ち始めたある日「あのね、色々考えたんだけど、自宅で産んでも良い?」と相談されました。“えぇっ!大丈夫か?”と不安に思いましたが「助産婦さんに会って良く説明を聞いてからにしたら・・」とその時は曖昧な返事をしました。
当時夫婦共に親しくしていた仲の良い友人二人が自宅出産を経験していました。しかしまさか妻がその自宅出産にしたいと言い出すとは思ってもいませんでした。
「自宅出産をした二人は同じ助産婦さんにお願いしたんだって、凄く有名な人で講演とかしている人なの、二人とも病院より家の方が安心して産めたって言っていたよ。」
と妻はキラキラした目で私を説得してきます。有名とか講演しているとかは信用の基準にはなりませんが、後に仲間二人に直接色々な話を聞けたので、それならまぁ大丈夫だろうと自分を納得させていきました。
助産婦さんの診察を受けに行ったところ、自宅分娩を受ける条件として、月一度の出産教室に夫婦で参加下さいと強く勧められました。長女の分娩は産婦人科でしたから、私としては殆ど何の準備もなく当日を迎え、分娩に立ち会っただけの出産でした。
当時は生長の家の青年会活動が忙しいこともあり、月一回でもめんどうくさいなぁと思いました。また以前テレビで見た番組で、ラマーズ法とかで「ヒッヒッフー」のような呼吸法を夫婦で練習していたのを見ていたため、それを私もさせられるのかと思ったのです。妻が呼吸法を練習するのは理解できますが、付き添う夫まで一緒に呼吸法を練習している姿はなんだか間抜けに感じていましたので、自分がするのは嫌だなぁと思っていました。
ところが私の受けた出産教室はそうではなく、心の持ち方についての説明が主でした。
「いいですか、動物は病院なんかに行かず本能で出産しますよね。人間も有史以来出産をどうしてきたかと言いますと、産婦人科が整ったのも最近ですよね。それまでは自宅でみんな分娩してきたのです。病院にかからないといけない疾患が母体や子供にある場合はともかく、健康な女性ならば分娩は自然に出来ることになっているのです。」
「人間の体は素晴らしい能力をもっていますから、それを信じてください。」
「分娩の時に苦しむのは何故だと思いますか?それは分娩そのものが苦しいことなのではなく、分娩は苦しくて辛いと妊娠してからずっと周りの人が言うから、十月十日の間に痛いんだ辛いんだと思い込み、信じてしまうのです。そのために分娩が近づくと体が緊張し、本来の生理作用が働かず、本当の痛みになってしまうのです。分娩は自然の摂理です。排便が自然の摂理と同じく、自然の摂理には本来痛みがあるものではありません。」
これには私も大いに賛同し、助産婦さんを信頼することが出来ました。
さて出産当日です。妻は風呂に入り、色々とリラックスする体操とかして出産を待ちます。陣痛の間隔が近づくのを待つ妻の傍らで、助産婦さんはゆったりと準備をしていきます。やがて横になり「生まれそう」と言い出した妻。しかし助産婦さんは「二階で遊んでいる娘さん(当時2歳)がまだ降りてこないでしょう。だからまだ大丈夫、もう少し時間は先よ。子供は直感で判るから生まれるときになったら側に来るのよ。」と言っていました。
本当に言ったとおり暫くして娘が居間に降りてきて、妻の側に座り込んだ頃に破水が始まりました。小さな子供の持つ不思議な霊的な感覚に驚きを感じました。
自宅の居間で仏壇を頭に出産が始まりました、暫くして無事に男の子を出産しました。私は単純ながらも生命の誕生に大きく感動しました。新生児は体を小さく折り畳み、頭の形を変え廻りながら生まれてきます。その姿を見ていると本当に訳もない感動が喜びになって押し寄せてきました。生まれて直ぐに妻の体の上で抱かれるとピタリと泣きやみました。そして「臍の緒を切り、産湯をつけるのは父親の役目です」と助産婦さんに指導され私はそれらを体験させて貰いました。産湯で体を洗い生まれたての子供に声をかけると、小さな目をしっかりと開け、私の顔をじっと見つめてくれました。
(平成17年10月4日)
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