
企業体質改善センター代表 元東海大学講師
生長の栄える会ゲスト講師 伊藤 勝啓

私は、東海大学で教鞭をとってきました。3月に卒業生を送り出して、みんな元気でやっているかなと思っている時に、新入社員の皆さんとお会いできて、とても嬉しく思います。
まず最初に、会社生活で大切な「3かく」についてお話します。
まず始めは、「字を書く」ことです。メモを取ることは非常に重要です。職場で何か指示されても、やがて忘れてしまうことが多いですね。それは何故かというと、引出しがないからです。メモを取ることは、その大切な引出しを作ることになるのです。
実際に職場に入ると、仕事がどんどん入って来ますので、お客様と相対する時も、必ずメモの用意をしてください。また、上司から指示を受けた時も、メモをしましょう。1本で3色のペンなどを用意しておくと便利です。言われたことは黒、気付いたことは青、さらに気付いたら赤という風にするといいですね。
メモは目から入ります。それを口で言ってみる。すると耳に入り、きちっと記憶に残ります。
次に、「汗をかく」ことです。これは体の汗だけではありません。頭でも大いに汗をかいてください。要するに、一所懸命考えるということです。一所懸命に考えて、そして実行していくことによって、大切なものが身についていきます。
3番目は、「恥をかく」ということです。これは人に対しての恥ではなくて、自分自身に対して、「本当はもっと出来るはずなのに、なぜやらなかったのだろう。本来の自分に対して恥ずかしいな」と思うことですね。
私もこの年になるまで沢山の恥をかいて来ました。しかし恥をかくたびに生長しているのが解ります。
柔道無差別級、重量級の金メダリストで東海大学で体育学部の教授をしておられる山下泰裕さんから東海大学の集まりの時に、次のような話を訊いたことがあります。
柔道は先ず受身の練習から入るそうですが、最初は人から投げられて転がされた時に、「ああ恥ずかしいな」と思うそうです。それを何度も何度も体験しているうちに、自分から投げ飛ばされた人の気持ちが良く解るようになる。すると自分が勝った対戦相手に対しても、「投げ飛ばして悪かった。でも彼のお陰で勝たせて貰った。ありがとう」という気持ちになる。そして相手に対して、これを機縁にもっと頑張って欲しいと思うようになり、その様な気持ちで、最後に礼をすると、その気持ちが相手にスーッと伝わると言うのですね。
こういう気持ちがとても大切なのです。だから大いに恥をかいて生長してください。
そしてついでに申しますと、「きく」という言葉は、「聞く」は耳で聞く、「聴く」は心で聴く、最後の「訊く」は、質問するということですね。だから話を聴いたら、質問するところまで行けば素晴らしいと思います。
皆さんは、食に関するお仕事をしておられて素晴らしいと思います。人類の「幸せづくり」に貢献されているわけです。
職場で一所懸命働いて、お昼が待ち遠しくて、そうしていただくお弁当の美味しさ、あるいは夜、一家団欒の食卓を囲む幸せ。この様な「幸せづくり」に貢献する仕事をされている皆さんは、大いに誇りを持っていただきたいと思います。
日本は、本当に食の豊かな国です。しかし世界67億の人口のうち、約10億の人々は、食が満足に摂れていないのが現状です。人類は食がなければ、生きて行けません。「衣食住」と言いますけれども、本当は、「食衣住」だと私は思います。
皆さんは、食べニケーションとか、飲みニケーションという言葉を聞かれたことがあると思いますが、アメリカでも、「communication through eating & drinking」という言葉があるように、食事を共にして親睦をはかるというのは、人類共通の楽しみであり、また大切なことです。
人生あるいは仕事は、C&C&Cだという風に申し上げているんですが、この3つのCは、思慮とか思いやりであるコンシダレイション(consideration)、それからコミュニケーション(communication)、さらに共に働くという意味のコラボレーション(collaboration)の3つのCですが、思いやりをもって、心を通わせ、そして共に働くこと。これが大事だと思います。
私は大学の経済学部の経営学科で人事管理や労務管理などを学び、昭和33年に富士電機という会社に入りました。入社して、「何をやりたいか」と尋ねられて、「将来は社長になりたい」と、言ったのです(笑)。そして、将来トップになるためには、我が社は製造業だから、工場に配置してほしいと願い出ました。そうしたら、7千人が働く川崎工場に配属されました。川崎工場に出向くと工場長が、「まず会社にとって大事なことは、数字が解ることだ」とおっしゃり、原価計算係に配属されたのです。
しかし、50年以上前の時代ですので、まだコンピュータはなく、IBMがようやくカードシステムを開発した時代でした。ですから我々は、毎日工場からどんどん上がって来る伝票をソロバンで計算したわけです。伝票と首っ引きで毎日頑張り、百時間の残業はざらでした。そうしましたら、4ヵ月目に倒れてしまいました。
倒れてみて、どんなに頑張って残業しても、会社を休んだら、みんなに迷惑が掛かるということが良く解りました。だから皆さんに是非お願いしたいのは、体には気を付けていただいて、絶対に休まないようにしていただきたいということです。
しばらくして先輩に、「どう、よくやってる?」と訊かれて、「まあやってます」と答えたら、「伊藤さん、まあじゃ駄目だよ。大事な原価計算じゃないか。一所懸命やらなきゃ駄目だよ」と言われて、ハッとしました。それで、ただ計算するだけではなくて、今までこの工場ではどんな原価計算をやって来たのか、調べてみようと思い、書庫に行き、7年前の伝票から全部チェックしてみました。
そうしたら先輩の汗の跡が見えて来ました。それで1年ほど経ってから、「ちょっとおぼつかないかもしれませんが、こんな風に改善案を作ってみました」と、上司に提案をしました。
すると課長が、「伊藤さん、これを待っていたんだよ」と言われました。その提案の後、工場長から「早く工場全体の勉強をさせなさい」と指示があり、ジェネレーターやモーターの生産工程を管理する、900人規模の第一製造課に配属されることになりました。
しかし、私には専門外であり、図面の見方など良く解らないのです。一角法や三角法なども全然知りませんでした。それで本を買い込んで猛勉強しました。そして現場の職長さんに、「すみません、これはどういう風に考えたらいいのですか?」と、図面を持参して、図面の見方や加工の仕方を教えて貰いました。すると40代、50代の本職の方々が深切に教えてくださるのです。
その理由は、私が経理課にいた時のこと、上がって来る伝票に、記載洩れや間違いが見つかるのです。先輩達は電話で「何々主任、ちょっと書き方が違うよ。もう1回書き直して」とやっていましたが、私はそれではいけないと思い、守衛さんに自転車を借りて、5千坪ある工場を自転車で走って現場まで行き、「すみません。この伝票の書き方、こうなっていますが、こう書いた方がいいんじゃないですか?」と、コミュニケーションを取っていたからなのです。だから深切丁寧に教えて貰えたわけです。
私は学生時代から、谷口雅春先生が書かれた『生命の實相』を熱心に拝読しておりました。その中に、「今を生かせ、今に全力投球せよ」という教えがあり、それに従ったまでなのですが、それが2年後に生かされたわけです。
そして、その2年後には、生産課の全体の計画をする部署に配属されることになりました。
当時、現在のパナソニックや東芝、日立など大手から中堅まで、みんなが入っている電気労連という労働組合があり、何かと言うと、「賃金を上げろ」とか「待遇を改善せよ」という要求ばかりして、会社側と対立していました。それで、「これはいけない」と思いまして、弱冠27歳でしたが、労働組合の副委員長に立候補し、当選したのです。私は労働組合の選挙運動をやっているつもりはなかったけれども、自転車で現場を回り、生産課に配属されてからは、組長さん、主任さんから色々教えて貰っていた。それでいつの間にか、「伊藤という男はこういう男だ」というのが、飲みニケーションなどで話題になっていたらしいのです。
副委員長になってからは、経営協議会という会合で、会社の方針に対して組合としてはこういう風にすれば、より生産性が上がるのではないかということなどを提案しました。
その後、会社に戻るのはどうかと思いまして、中小企業に転じて、工場長、常務などを経験し、是非助けてほしいということで、ディスカウントショップで小売業の勉強もしました。
原価計算をしていた頃から数えて14年後に、私はスタンフォード大学のビジネススクールで、管理会計と国際経済を学びました。数字は万国共通です。毎日宿題が出て、夜中の2時3時まで勉強しました。素晴らしい教授にも恵まれましたが、原価計算をしていたお陰で宿題の答えを誰よりも早く解くことができました。それを見て、沢山の学生が寮の部屋に習いに来るようになりました。これでは勉強が出来ないからと言うと、「ヒロが一番困っているのは何だ」と言うのです。国際経済など200頁もあるのを一晩で読まなければならないことだと言いますと、それを俺達がやるからというわけで、いつの間にかみんなでコラボレーション(共同作業)するようになりまして、時間に余裕が出来るようになりました。それでほんの30分ほど飲みニケーションし、それからまた皆で午前2時まで勉強をしたのです。
まさか原価計算をやらせていただいたことがここで生きて来るとは思いもしませんでした。人生はまさに「今を生きよ」の連続なのです。
とにかくこの年になるまでには、泣くことは沢山ありました。しかし泣くことによってこんな自分ではないはずだと、そこで力がつくわけです。だから皆さん、是非泣いてください。泣くぐらいの仕事をやらなきゃ駄目です。上司に苛められるとかではなくて、自分自身で、「こんな事が出来なくてどうする!」と、発破をかけるのです。
私は現在、コンサルティングをしていますが、これも全て人との出会いなのですね。一所懸命やっていると、善き人々に出会います。東海大学で26年にわたって教鞭をとってきましたが、これも友人が「伊藤君も教えてみたらどうか」と言ってくれて実現したのです。
ですから人生は、「損か得か」ではなくて、本当に真剣にやる。すると、必ずこの宇宙と言うか、神様と言ってもいいですが、そこに流れている一つの大きい生命が、「この人を使おう」と使ってくれるのです。私は今まで使命というのは、自分の生命を使うのだと思っていましたが、そうではなくて、人様に使っていただくものだとわかりました。
明るい会社生活を送るには、睡眠と運動、栄養ある食物、それに情緒の安定が必要です。情緒の安定という点では、『生命の實相』の第7巻には、絶対的楽天主義ということが説かれています。どんなに悪い事が起こって来ても、必ず良くなるのだという人生観です。だから泣いていても悲しくないのです。これできっと良くなるのだと信じられるからです。だから私はどんな時でも精神の安定を得ることが出来ました。
それと、お客様からのクレームですが、クレームは、お客様からの提言なのです。だから迅速に対処し、必ず返事をすること。すると、100人のうち90人は固定客になるといわれています。“自分が変れば世界が変る”。皆さんが“運命の主人公”なのです。
皆さんにはお爺さん、お婆さんがおられると思いますが、10代遡ると1,024人の直系の先祖がいらっしゃる。その内の1人が欠けても我々はここに存在出来なかったわけです。だから先祖に感謝です。
それから私はアメリカの友人から、「ヒロ、日本は良いなあ。皇室がズーッと続いているというのは精神的な支えとして素晴らしいな」と羨ましがられました。国の中心者が常に国民の幸せと、世界の平和を祈っておられる日本は素晴らしい国だと思います。
現在は100年に1度の経済危機と言われますが、経済には、山と谷があります。山に向かえば好況、谷に下れば不況と言われます。そのようにして今日(こんにち)まで、山あり谷ありとやって来たわけです。ですから不況という言葉に惑わされることなく、しっかりと舵を取れば、大丈夫なのです。むしろ、これを、“物から心への時代”に大転換する良いチャンスだと捉えてみんなで頑張れば、1年から3年ぐらいは時間がかかるかもしれませんが、必ず立て直すことが出来ます。
今日のテキストである、『生命の實相』第7巻は、必ず皆様方のこれからの会社生活を、「明るく、楽しく」するものですから、是非お読みいただきたいと思います。ありがとうございました。
◯「第16回新入社員研修会」(4月2日〜4日:富士河口湖練成道場)◯